メンタル天気予報コンケアというサービスが生まれたきっかけは私がいまも在籍しているシステム会社での出来事でした。
2009年、リーマンショックの余波が日本中に影響及ぼしている頃、私たちのシステム会社も大きな影響を受けていました。
管理職も一般職もなく、皆が忙しい毎日で終電に駆け込むというのが日常の風景となっていました。
ある時、私のデスクから5メートルも離れていない女性社員が急に会社に来なくなりました。
当日は携帯電話もつながらず、2日目にようやくメールの返信がありました。
「今自宅にいますが、外に出ることができません。気持ちはあるのですが、体が動きません」
何回かのやりとりの後、ようやく自宅近くの喫茶店でようやく話すことができました。
会うなり、彼女は頭を下げて、こういいました。
「忙しい時に迷惑をかけてしまって、みんなに本当に申し訳ありません」
後は黙って涙を流すだけでした。
私は言葉を失い、沈黙の対面の中で考えていました。
謝るのはこちらではなかったのか。
こんな思いをさせていることに気づかなかった。
つらい思いを聞いてあげる機会さえ作ってあげられていなかった。
あやまるべきは自分たち管理職にあるのではないか、と。
とはいえ、なにから手を付けてよいか分かりませんでした。
企業向けにメンタルケアサービスを提供している会社に提案されるまま、管理職向けの研修を実施することにしました。
研修に参加した管理職社員は、乾いたスポンジが水を吸い込むような貪欲さで研修のワークをこなしていきました。
管理職のみんなも現状に対する不安や問題意識があったのだと感じました。
安心したのもつかの間、研修が終わり、研修ルームから出ていく参加者の笑顔をみて今度は違う不安がよぎりました。
研修は毎日できるわけではない。
一回やっただけでこの後問題ないなんて絶対に言えないだろう。
わかったつもりになることが1番怖いのではないか。
後日、大変失礼ながら研修会社の担当者にその不安をぶつけました。
不安を和らげる返答をどこかで期待していたのかもしれません。
ただ、実際の回答は違いました。
「私たちもいつも不安に思っています」
様々なメンタルケアサービスを長年提供しているが、
サービスを提供したお客様から不調者が減らないという話が来ることは決して珍しいことではない。
依頼を受けてから、都度対応するという方法に限界を感じているという話でした。
私はその話に強く共感しました。
現場は研修ルームではない。
常にビジネスの現実と向き合っていかなければならない。
同じような危機感を持つ経営者や管理職が日本中にたくさんいるかもしれない。
結果的に互いの不安の共有がコンケアというサービスを生み出す種となりました。
待ち型ではなく、常に職場や社員に作用する仕組みを持ったメンタルヘルスサービスを作れないか。
そこからは一気でした。
実際に不調を経験した社員からのヒアリング、特許となる計算ロジック構築、システムの一からの開発など、怒涛の勢いでサービスの実現化にまい進しました。
『心の支援を届ける』
私たちのミッションはこの言葉に集約されます。
心の支援を求めているのに、伝える機会がない、伝える人がいない、伝わっても組織が動かない。
結果、本人だけで抱えてしまい、人知れず悩みを深めていく。
職場は本人から診断書をもらって初めてその悩みに気づく。
そんなかなしいループをひとつでも減らしていければと考えています。
きっかけとなった出来事から10年以上が経過しました。
今も働く人のメンタル不調者が増え続けていると言うデータがあり、
現代社会におけるメンタルヘルスの問題は深刻で、時に途方に暮れることも正直あります。
だからこそ、一歩一歩、ひとりでも多くの方に心の支援が届くよう、前進し続けるが大事だと考えています。
株式会社コンケア 代表取締役 石田 有